初めての報酬は、嬉しさと悔しさが同時に来た(行政書士としての学び)

12月某日、大阪会の専門部会でパネラーを務めました。
若手、中堅、ベテランという立ち位置で私は中堅のパネリストでした。
事務所の経営のテーマが何点かあって、
それぞれについて司会者から指名され回答していくというものです。
心の中では、あんまり参考にならんでー(失敗の連続での15年ですから)と
その中で出た質問のひとつが「報酬(価格)の決め方(失敗例/成功例)」でした。

その場では、最初は絶対赤字になってめっちゃ失敗の連続でしたよーと回答しました。
で、ですね、私は“初めて報酬をいただいた日”のことを振り返ってみたいと思います。
今日は、その原点を書いてみます。


初めての報酬は、嬉しさと悔しさが同時に来た

初めて、行政書士として報酬をいただいた日のことは今でも鮮明に覚えています。
嬉しくて、涙がちょちょ切れるほどでした。

「自分の知識や段取りに、お金を払ってくれる人がいる」
その事実だけで、胸がいっぱいになったんです。

でも同時に、もう一つの感情が押し寄せました。

「こんだけ頑張って、これだけか…」

嬉しい。なのに、悔しい。
この2つが同時に来たのは、今思えば当然でした。


なぜ悔しかったのか:行政書士の“価値”がまだ出せていなかった

当時の自分は、実務経験がほとんどありませんでした。いや、ゼロです。
だから能力不足が主要因だったのは間違いありません。し、当然の結果です。

行政書士の仕事は、書類を作って提出するだけではありません。
依頼者が本当に欲しいのは、多くの場合こういうものです。

  • 要件を満たすかどうかの判断(そもそも通るのか)
  • どこがリスクになるかの見立て(落とし穴の発見)
  • 行政とのコミュニケーションの代替(ストレスの肩代わり)
  • ゴールまでの最短ルート設計(無駄な往復を減らす)
  • 「このまま進めて大丈夫」という安心

でも経験が浅い頃は、ここが弱い。
結果として、価値は「作業」に見えやすくなり、報酬も作業の対価になりやすい。
また、初めてのことで何をどうすれば良いか、無駄に時間を消費する。

だから、あの日は嬉しいと同時に、悔しかったんだと思います。


この感覚は今も残っている。だから学ぶ

正直に言うと、あの時の感覚は今も残っています。
もちろん当時よりできることは増えました。

それでも、時々こう思うんです。

  • この労力で、この単価はきつい
  • もっと価値を出せる設計がある
  • 作業量で戦っていたら、いずれ限界が来る

この感覚があるからこそ、私は今、強く思います。

利益の最大化と、価値の向上にこだわる。

それは「儲けたい」という話だけではなく、行政書士として仕事を続け、より良い支援をするための条件だと思っています。


行政書士として「価値=報酬」を作るために、学び直したこと

“学び”と言っても、単に資格の勉強ではありません。
実務の価値を上げるため、利益を上げるための作業効率化等の学びです。
実務についてまとめます(作業効率はまた別の機会に)

1. 要件の理解は「暗記」ではなく「判断」に変える

条文や手引きを読めるだけでは足りない。
実務では「このケースは通る/通らない」「どの資料で立証するか」を判断する必要があります。

経験を積むほど、ここが強くなる。
だからこそ、案件ごとに

  • どこが要点だったか
  • 何がネックになったか
  • 行政が気にしたポイントは何か

を振り返って、次に転用できる形に残すようになりました。
そして、私は積極的に大手事務所が引き受けない、労力、手間暇のかかるを受けました。

2. 行政対応は“交渉”ではなく“設計”だと捉える

行政書士の価値は、強く言うことではありません。
多くの場面では、最初から「通る設計」にしていくことが重要です。

  • 先回りで補足説明を入れる
  • 反論ではなく、納得できる材料を揃える
  • 事実関係を丁寧に整理して、相手が判断しやすい形にする

この「設計力」が上がるほど、結果もスムーズになり、依頼者の満足度も上がる。
そして報酬の根拠にもなる。

3. 価値を「視える化」して言語化する

許可が取れること自体は分かりやすい成果です。
でも依頼者が本当に助かっているのは、実はここだったりします。

  • 不許可・補正・遅延のリスクを下げた
  • 行政とのやり取りを丸ごと減らした
  • 事業の意思決定が前に進んだ
  • 「何をすればいいか」が明確になった

ここを言語化し、提案・見積・報告の中に組み込む。
そうすると、同じ成果でも「価値の伝わり方」が変わります。
特に意識したのは、お客様の意思決定の負担軽減です。


利益の最大化は、行政書士として“責任を果たす”ための条件

利益がないと、続けられない。
続けられないと、守れない。

  • 依頼者に最後まで責任を持てない
  • 品質を上げる投資(テンプレ、チェックリスト、教育)ができない
  • 事務所の体制が整わず、対応が遅れる
  • 自分が疲弊して、判断が鈍る(これは一番怖い)

だから私は、利益を「余剰」ではなく、品質と継続のための基盤として捉えるようになりました。


最後に:あの日の悔しさは、今の自分の燃料

初めての報酬は嬉しかった。
でも同時に、現実も見えた。

「努力が報われる設計になっていない」

あの日の違和感は、そう教えてくれたのかもしれません。

だから今日も、私は学び続けます。
価値を上げるために。
そして、長く続く支援をするために。

行政書士の仕事は、依頼者の人生や事業の「前に進む瞬間」に関わる仕事です。
その瞬間を支える責任があるなら、利益と価値にこだわるのは当然だと思っています。


効率化は、楽をするためではなく、責任を果たすため!と思うのです。